第262回長野県眼科医会集談会 特別講演
先天色覚異常の日常診療と学校での対応
東京女子医科大学眼科 中村 かおる
先天色覚異常は色誤認を自覚することが難しく周囲に気づかれることも少ない。学校での色覚検査がほとんど行われない状態が続き,自分が色覚異常と知らずに成長して学校生活や就業中に不測の不利益や誤解を生じたり,就職時に突然進路を絶たれる事例が増加した。そしてこのたび,文部科学省の指導により学校での色覚検査や配慮が積極的に勧められることになり,眼科一般診療の場でも,先天色覚異常の小児やその家族から詳細な診断や指導を求められることが増えた。また眼科学校医には,学校から検査や配慮の実際について助言を請われることもある。
石原色覚検査表は世界でも高く評価されているが,2013年に改版され,環状表が加わっている。パネルD-15を備える施設も最近急速に増えたが,とくに小児では,判定に迷う事例も多い。
本講演では,先天色覚異常の色誤認の本質と実態,これをふまえた日常診療での検査と指導,学校現場での対応の要点について解説する。